もくじ
・出題形式・試験時間
・2017年度の出題
・出題の傾向と解析
・北大国語の入試対策
・過去問の傾向を年度別に徹底解説
・北大国語対策のオススメ参考書
・センター試験国語の出題・対策
出題形式・試験時間
出題形式:現代文2題、古文1題、漢文1題 150点満点
試験時間:120分
2017年度の出題
出題 | 大問数 |
現代文(評論文) | 2 |
古文 | 1 |
漢文 | 1 |
大問 | 内容 | 出典 |
大問1 現代文(評論文) | 書き取り(7か所)、傍線部説明(25字) 理由説明(50字)、傍線部内容説明(80字)、全体の趣旨を踏まえたうえでの傍線部内容説明(120字) |
香川雅信『江戸の妖怪革命』 |
大問2 現代文(評論文) | 同じ段落の言葉を用いた筆者の考えの説明(40字)、傍線部の説明箇所の抜き出し(20字)、指示語の内容を明らかにし、傍線部の内容説明(60字)、「何をどのようにすることだと考えられるか」傍線部説明(30字)、筆者がリスク論をどのように問題視しているか説明(90字) | 金森修『知識の政治学〈真理の生産〉はいかにして行われるか』 |
大問3 古文(中古楽書) | 現代語訳(3か所)、傍線部の指し示す発言の内容説明(20字)、行動の理由説明(60字)、人物の評価に対する理由の心情説明(60字) | 隆円『文机談』 |
大問4 漢文(随筆) | 重要語の読み(3か所)、書き下し、現代語訳、理由説明(75字) | 王心斎「鰍鱔賦」 |
出題の傾向と解析
現代文の傾向
問題一はおおよそ2550文字、問題2はおおよそ3100文字で、近年の北海道大学の現代文の出題としては平均的な長さでした。江戸時代から近現代にかけての、妖怪たちに対する日本人の意識変化についてのべた文化論で、2013年に出版された作品からの出題でした。
問題二は、2015年出版の作品でポスト311の政治や経済と密接な関係を持つようになった、科学の現状に対する哲学的な論説です。特に技術的世界におけるリスク論を述べています。近年の北大では、このように多岐にわたるジャンルが取り上げられています。
出題は、設問数が5、指示語の内容を明らかにしながら、傍線部を説明する問題などが頻出です。記述にはすべて字数制限があり、文字数は少ない傾向ですが、2017年は120文字の記述がありました。抽象的な言葉の理解、指示語の内容把握など、的確に「読めているかどうか」を、問われています。
「本文の言葉を用いて」「具体的に」「同じ段落の言葉を用いて」など、条件付きの記述は。特に注意深く設問を読まないと点にならないでしょう。
古文の傾向
昨年は、4年ぶりの中世の文章を出題。琵琶の名手である藤原孝道・孝時親子の、秘儀伝授にまつわる事情を語った文章でした。中世の芸能の伝承のあり方についての理解ができれば、読みやすい文章でした。記述量は、若干増加しましたが、記述は内容が理解できれば書きやすい出題で、比較的解きやすい印象です。
漢文の傾向
明代の思想家・王斎が、鱔(ウナギの一種)を救う鰍(ドジョウ)の有様を見て天下を救う志を抱いたことを語った文。近年は、3年連続でこのように、筆者が自分の感慨を述べる文章が出題されています。198字で字数は多いですが、注がたくさんついていて、比較的読みやすい出題でした。重要語の読みや歴史的仮名遣いによる書き下し、現代語訳、理由説明など、例年通りの出題がされています。
北大国語の入試対策
北海道大学は、学生に日頃から物事に関心をもって、論理的な思考をすることを求めています。入試でもそれが試されるので、急場しのぎの回答テクニックでは対応できません。筆者の主張を客観的に読み取り、的確に表現することが必要です。出題テーマもさまざまなので、あらゆる文章に対応する準備をしましょう。
そして、文の構造にしたがって読み解いた内容を要約する練習をしましょう。「自分で考えていることが文章にできない」という受験生は、まずこの要約から始めて、誰かに添削指導してもらいながら、書く力をつける必要があります。
北海道大学の出題文は、一見読みやすいですが、筆者の独特な視点によって論旨が展開していきます。傍線部分の前後だけをつなぎ合わせるだけでは、対応できません。設問と筆者の主張の関係を意識して、解答の柱にするとスムーズに書き進めることができるでしょう。特に、接続語や指示語を頼りに全体像を把握し、短い時間に記述の下書き→推敲できるように練習を積んでください。
古文は、文化史や古典に関する知識も要チェック
古文の学習は、「文法、語法、重要語句の知識」「正しい現代語訳と解釈」「主題を読み取る」の3ステップで進みます。北大の古文は、中古から近世にかけて幅広い時代を取り上げるので、いろんな種類の文章に触れることがおすすめです。また、短い文章で設問に求められていることを答える、高度な記述力が問われます。手際よく趣旨をまとめて、記述に落とし込むにはトレーニングが必要です。
模試や授業で学習した文章の現代語訳を作ったり、40~80文字で人物の心情や行動をまとめるのが、記述の練習になります。文化史や古典常識、当時の思想背景なども、自分なりのノートを作ってまとめておくと役にたちます。
漢文は、基本の句形や、漢文ならではの漢字の意味になれる
漢文に関しては、筆者の主張が述べられているので、対比や対句に注意して、読み取りましょう。基本的句形と重要語の知識、漢字の語彙力も重要です。200字以上の文章がでるので、それらの基礎知識を活用して、限られた時間で読みこなせるかどうかがカギになります。
読みについては、歴史的仮名遣いが求められるので、練習しておきましょう。出題形式が固定化されているので、北大の過去問のほか、余裕がある人は出題形式が似通っていて、論説的な文章が出されやすい、東北大学の過去問に取り組んでみるのもおすすめです。
文系科目の入試対策はこちら
・北海道大学(北大)の「英語」入試対策
・北海道大学(北大)の「日本史」入試対策
・北海道大学(北大)の「世界史」入試対策
・北海道大学(北大)の「地理」入試対策
過去問の傾向を年度別に徹底解説
記述中心で、現代文、古文、漢文をまんべんなく出題するという、国立大学の試験としてはオーソドックスな出題となります。現代文の出題テーマとしては、2015年は、科学とデジタルに関する社会論、2016年は劇作家によるエッセイタッチの国際社会の考察と芸術論、2017年は妖怪や幽霊に対する見方の変化をあつかう評論とリスク論、2018年はダ・ヴィンチと蝶の関連についての随想と、翻訳について述べた文学論でした。芸術から社会、科学とジャンルは多岐にわたっており、「妖怪」など、やわらかめなテーマが取り上げられることもあります。ほとんどの文章が、2010年代以降に発表&書籍化されている、比較的新しいものであるのも特徴といえます。
2015年の大問二の、芸術論は文章自体が受験生には難解、2016年の大問二は設問のまとめ方が難しかったのですが、2017年、2018年は標準的な難度で落ち着いています。
記述文の文字数は、
2015年
問1 | 30 | 50 | 50 | 100 | 合計230文字 |
問2 | 40 | 40 | 80 | 80 | 合計240文字 |
2016年
問1 | 30 | 40 | 80 | 100 | 合計250文字 |
問2 | 60 | 75 | 60 | 90 | 合計285文字 |
2017年
問1 | 25 | 50 | 50 | 120 | 合計240文字 |
問2 | 40 | 50 | 70 | 100 | 合計220文字 |
2018年
問1 | 40 | 50 | 70 | 10 | – | 合計260文字 |
問2 | 20 | 30 | 60 | 50 | 80 | 合計240文字 |
最大で、120文字、通常で100文字までというのが、北海道大学の記述です。
古文は、2015年が平安時代の歌学書、2016年は『枕草子』、2017年は鎌倉時代の芸能論、2018年は近世の花道に関する文章と、時代もテーマも多岐にわたります。それまでは和歌が含まれない文章が多かったのですが、2015年は和歌が2首含まれて難度も高いものでした。
古文の出題
『枕草子』も、おなじみの作品ですが、省略が多いので初見の受験生は内容を把握するのが難しかったかもしれません。2018年の『抛入花伝書』も、一部文意が捉えにくいところがありました。和歌を含む文章や、近世の文章などが出題されやすいと考え、意識して学習を進めるといいでしょう。
このように、難度の高い文章も出題される北大の古文ですが、現代語訳や比喩の説明など、とりやすいところで確実に得点すれば、合格点に達します。理由説明、心情説明は60字や40字など字数が少ないので、短い言葉で的確に内容を伝える練習を重ねましょう。
漢文の出題
漢文の出題についてです。2015年は、墨と硯、筆を例にして人の生き方をといた随筆的な内容。2016年は蘇軾の文章で酒を飲まない作者が、酒を造っている理由を述べた文章。2017年はウナギとドジョウをみて、主人公が志を立てる寓意的な話。2018年は、人間の夫婦げんかに介入するキツネの群れを通して、キツネのほうが人間より礼にかなっているとする寓意的な内容です。いずれも、文章は比較的平易ですが、ただの物語ではなく寓意や随筆から作者の意図を読み取る必要があり、最後の記述で差が付きます。
北大国語対策のオススメ参考書
『得点奪取 現代文記述・論述対策』(河合出版)
現代文の参考書としては、問題文が25問と多いのが特徴。回答は200文字の論述をもとめるなど、すべて記述です。問題文全体の仕組みを捉える「論述の基本」と、傍線部と対応箇所の関係をもとに設問を3パターンに分類しています。難易度は高いですが、ただ読みやすいだけではなく、採点基準をがっちり盛り込んだ記述の書き方を教えてくれるので、北大の入試対策にぴったりです。
『読んでみて覚える重要古文単語315』(桐原出版)
入試対応に必要な315語と慣用句40語を厳選。ひとつひとつに解説と例文があり、語源の説明も入っていたりと、古文に関する理解が深まります。助動詞や敬語の一覧、文字であらわしにくいイメージや補足を、記号や図式で表現されているので、古文に関する知識の基礎固めにぴったり。入門時だけではなく、最後まで手もとにおいておきたい1冊です。
『漢文早覚え即答法 パワーアップ版』(学研マーケティング)
漢文学習の定番とされる、20年以上のロングセラーです。「10の“いがよみ”公式」、漢文特有の「これだけ漢字92」など、覚えなければいけない句形、漢字がしっかり押さえられます。「漢文の学習に時間をさかない」がコンセプトで、生徒目線で覚えるポイントが絞られているのが、うれしいところです。
センター試験国語の出題・対策
北海道大学のセンター試験の得点率は、おおむね76~84%がもとめられています。約8割をターゲットにしましょう。
センターの現代文の傾向
評論、小説の2問の出題。現代文は、評論は傍線部の言い換えと理由説明、小説は心情読解と表現の解釈が得点源です。安定して高得点をとりにくく、センターの中では鬼門といえます。
2018年度の評論文は、有元典文・岡部大介『デザインド・リアリティ―集合的達成の心理学』でした。人間が、現実をデザインするという基本的条件について、具体例を出しながら論を展開しています。問3では、問題文に関する図について4人の生徒が対話を交わす中、空欄に正しいものをいれる、という新傾向の問題が出されました。そのほかは例年通り、本文ときちんと照らし合わせれば、解答が出る標準的なレベルの問題でした。
2018年の小説分は井上荒野『キュウリいろいろ』。5年連続での女性作家の作品の出題でした。現在の作家で文章は平易ですが、夫と子をなくした女性の心情が中心で、受験生はやや共感しにくかったかもしれません。問5の理由説明は、選択肢がまぎらわしく、ていねいに設問を読む必要がありました。
センターの古文の傾向
有名な作品が出題されることはないので、初見の文章の読解が必要です。全体の半分は、基本単語や基本表現で読解できる内容なので、前半の語意選択や口語選択で失点しないことが大切です。2018年のように和歌に関する出題もあり、古文常識や和歌の修辞法の知識もあったほうが解きやすいでしょう。
2018年の出題は、本居宣長『石上私淑言』で、17年ぶりに歌論の出題でした。例年より文が短く読みやすいものでしたが、問5、問6のように、問われている内容の該当箇所をみつけて答える問題は、解答しにくかったかもしれません。
センターの漢文の傾向
センターの国語の中では、比較的得点しやすいジャンルです。例外的な読み方や句形は出題されません。受身、使役、反語、比較、限定、詠嘆、部分否定、二重否定などの基本句形で、十分対応できます。
ここ数年は、随筆が多かったのですが、2018年は李燾『続資治通鑑長編』で、19年ぶりに本試験で史伝が出題されました。設問形式は従来通り、難易度も普通でした。
センターの現代文の対策
現代文は、テーマの理解と論点の把握、筆者の考え方の3つをおさえる必要があります。現代文が苦手な人はこのなかでも「筆者の考え」の理解が弱い傾向があるようです。
現代文であつかわれるテーマは、政治、社会、文化、自然、科学、哲学、芸術など多岐にわたります。苦手なテーマにも対応できるように、いろいろな題材の文に触れて、素早く論点を把握しましょう。新聞記事や社説は、筆者の考えや立場がはっきりと示されているので、読解力を磨くのに適しています。
問題を解く場合は、選択肢を先に読んで、ふさわしそうなものを選ぶのではなく、自分なりの正解を考えてから、傍線部の前後と回答を見比べて、整合性があるかをチェックしていきます。現代文に、最低40分はさけるように、古文と漢文を効率よく解く準備も大切です。
センターの古文の対策
古文単語や古文文法は、日常触れることがない言葉なので、短時間でも毎日学習して、頭から離れないようにするといいでしょう。知識の問題は確実に点を取れるようにすること。
読解では、文章の中で省略されている事柄を、きちんと読み取っていく必要があります。敬語表現に注目すると、主語が省略されているときでも「誰が」「何を」「どうした」のあらすじが把握しやすくなります。その点に注意しながら、「初見のやや長めの文章を、主語を見失わずに読む」という練習を。場面や時代設定、季節などに気を付けて読むと力がつきます。
センターの対策・漢文
漢文の基本は音読です。返り点と再読文字を覚え、音で漢文をとらえます。漢文で使われる漢字と、日常使う感じでは意味が違う場合があるので、漢字のまま考えるのではなく、漢文として読む技術が必要になります。難解な言葉には、注釈がついているので、必要な最低限の漢文単語だけを覚えて効率よく学習します。それから、教科書などで、基本の句形を完全マスターすることです。基礎を徹底していれば、100%の理解ができなくともセンターの漢文では正しい選択肢を選ぶことができます。漢文で落とさなくなると、センターの国語8割突破がぐんとちかくなるでしょう。
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