もくじ
・出題形式・試験時間
・2017年度の出題
・出題の傾向と解析
・北大化学の入試対策
・過去問の傾向を年度別に徹底解説
・北大化学対策のオススメ参考書
出題形式・試験時間
出題形式:全問記述式
試験時間:理科2科目分で150分
試験範囲:化学基礎と化学
配点は受験する課程によって異なり、
①総合入試理系、化学重点選抜群が理科二科目150点中100点
②総合入試理系、物理重点選抜群が理科二科目150点中50点
③総合入試理系、生物重点選抜群が理科二科目150点中50点
④総合入試理系、総合科学選抜群が理科二科目150点中75点
⑤総合入試理系、数学重点選抜群が理科二科目100点中50点
⑥医学部個別入試が理科二科目150点中75点
⑦歯学部、獣医学部、水産学部150点中75点となります。
以上のように、自らが受ける選抜群や個別入試によって配点がことなるため注意が必要です。
前年度の出題(2018年度)
出題内容は以下の通りです。
大問1 | Ⅰ理論科学 | 水の三態、熱化学 | |
Ⅱ理論科学 | 乳酸の電離平衡・中和滴定・塩基の混合水溶液 | ||
大問2 | Ⅰ理論・無機化学 | 典型元素の金属元素の性質と結晶 | |
Ⅱ理論・無機化学 | ガラスの製造、アンモニアソーダ法、イオン結晶 | ||
大問3 | Ⅰ有機化学 | 芳香族化合物に関する実験分析 | |
Ⅱ有機化学 | スルホ基をもつ化合物 |
出題の傾向と解析
北大入試化学は毎年出題傾向が安定しており、理論・無機化学:有機化学が2:1の割合で出題されます。また、国立大学らしく幅広い分野から出題されるため、穴のない学習がカギとなります。出題難易度は標準問題が多く、かつ、難易度の高い問題が近年増えてきており、標準問題で如何に点数をとりにいけるか、難問を見抜く力を試されます。
受験する選抜群や個別試験によって配点が異なるため、自分にあった受験を行うことをおすすめします。化学重点選抜群での受験生は取れる問題を確実にとりに行くスタイルが良いでしょう。しかし、化学重点選抜群を受験する受験生は、他の受験生との理科の勝敗が化学でついてしまうため、難易度によらず、完答を目指すことが重要です。
2018年度の北大化学は全体の分量がやや減少し、難易度も簡単になりました。
大問別に解説
大問1のⅠでは問4では、グラフ描写が問われています。この問題は過去3年連続で問われている問題です。今回のグラフ描写は大まかな傾向が分かるように描写すれば良かったのですが、リード文には書かれていなかったため、多くの受験生が戸惑ったのではないでしょうか。
また、問6では図なしに氷の結晶構造を考えなければならないため、難易度が高かったです。Ⅱの問1では、あまり見かけない題材である塩基が出題されました。しかし、リード文を正確に読み解けば基本的な問題です。
逆に問2は、よくあるテーマでしたが、題意をしっかりと読み取ることが出来ないと難しい問題でしょう。大問2のⅠは標準的な問題で特筆するべき点はありません。しかし、問5の(2)の問題は計算がかなり煩雑になるため後回しにしていいでしょう。
Ⅱの問5は珍しい結晶格子で、リード文を読み解きイオンの個数を数えることが解答できるかの第一歩となります。大問3のⅠは昨年度難化した分野ではありますが、今年度では標準的になりました。水素の発生量などから分かることを読み取れたかがポイントです。Ⅱは基本的な所からの出題ですが、石鹸や洗剤に関しては、学習が後手に回るため、万遍ない学習を行えたかがカギになりました。
北大化学の入試対策
全体の俯瞰
北大化学の出題傾向は、例年大問3題ですが、その中で2題に分かれており、実質は6題となっています。そこから有機化学・理論と無機化学で2:1の割合で出題されるため、実質的な出題は有機化学・理論:無機化学=4題:2題となっています。
説明問題や考察問題はほとんどなく、正誤問題、語句記述、計算問題が主だった試験内容です。
内容的には基本事項が徹底して分かっているかを問われる問題が数多くあります。教科書レベルの基本事項から外れることなく、受験生のレベルを測る良問しかなく、悪問・奇問が出されることはありません。そのため、地に足の着いた勉強法を如何に出来たかを誠実に測られる試験です。
また、特筆すべき事項として、試験時間が2017年度試験から、理科2科目で120分から150分に増加しています。理系の理科受験は2科目必須の為、1科目分が75分の計算となりますが、自分が受験する選抜群や個別試験によって柔軟に時間配分を決めることもできます。しかしながら、試験問題のボリュームから150分間で完答を目指すことはやや厳しいと考えられます。
理論化学分野
北大化学は理論科学分野からの出題割合が高いです。理論化学分野からの単独出題と年度によっては無機化学分野からの単独出題もありますが、無機化学分野と理論科学分野の融合問題が数多く出題されています。直近4年間では、無機化学分野からの出題は全て理論化学分野との融合問題です。
理論化学分野では、融合問題が多く出されることから、化学基礎・化学の範囲から広範囲にわたって出題されます。また、グラフを読み取る問題や書き出す問題が出題されることもあるため、考察問題が全くないということではありません。
頻出分野は、状態方程式、気液平衡です。近年では、状態変化、熱化学、電気陰性度、ハーバーボッシュ法、乳酸の電離平衡、反応独度、反応速度式、濃度、混合気体の性質、モル分率、電気分解、コロイドの性質、浸透圧の計算など多種多様な範囲から広範囲に渡って出題されています。
無機化学分野
北大化学入試において、無機化学分野は理論化学分野との融合問題で多く問われています。近年では、理論化学分野との融合で、金属元素の性質と結晶、鉄の製錬、電気めっき、電気透析法、ガラスの製造、アルミニウムの反応、水酸化アルミニウムの性質、炭素の性質、金銀銅の性質結晶などです。
有機化学分野
有機化学分野は北大入試化学において、単独で出題されることが非常に多くあります。また、現役の受験生にとって学習と対策が後回しにされがちな、天然・合成高分子が毎年必出となっています。
そのため、対策を怠れば大きく失点してしまう可能性もある分野と言えるでしょう。頻出分野としては、天然・合成高分子と芳香族の有機化合物、そして計算問題です。また、近年では芳香族化合物、スルホ基、脂肪族化合物、ゴム、アミノ酸、アルケン、炭化水素、油脂、界面活性剤の性質などです。
入試対策
北大入試化学は、幅広い分野からの出題となります。また、教科書事項の基本が数多く出題されるため、地に足の着いた学習を高度に行っていくことが必要となってきます。まず、理論科学分野・無機化学分野・有機化学分野の知識のおさらいと反復が北大化学の攻略第一歩となります。
この徹底によって知識分野からの出題は得点が期待できるようになります。具体的には、教科書の太字を中心に隅々まで読み込み、正確な知識を身に付けることです。
用語だけを覚えるのではなく、定義の面からしっかりと理解し落とし込むことが重要です。用語を答えられるという次元から教えることができる次元まで引き上げることが理想です。
そのためには、用語の定義で分からない所は参考書で確認を行い、教科書の傍用問題集で何度も知識問題にチャレンジしましょう。また、各大問・中問で計算問題が必出となっています。計算問題も頻出分野だけに留まらずオールラウンドに万遍ない学習を心がけましょう。
基本的な問題を確実に抑えつつ、計算速度を早める
問題の難易度的には、基礎から標準の問題が多く出題されるため、化学の計算が苦手な受験生も演習を積み重ねることによって確実に点数が取れる問題が増えていきます。
しかし、化学重点選抜群の受験生は完答を目指し、他の受験生が落としそうなやや難易度が高い計算問題にも果敢に挑戦していく姿勢が必要です。
また、化学重点選抜群の生徒は150分という時間がありながらも、理科を2科目分解かなくてはならないことと、問題の数が非常に多く、時間的な制約がかなり厳しいため、計算速度向上も目指さなくてはなりません。
一見遠回りに見えても、基礎基本の計算問題から徹底演習を積み重ね、ミスなく正確にそして素早い計算力を地道につけていきましょう。
各分野の対策
ここからは、各分野に置ける入試対策を見ていきます。
まず、理論科学分野は、原理原則を一通り学び、標準問題を数多く解くことをおすすめします。
割合的に理論化学分野の占めるウェイトは多いため(無機化学との融合で出題されるため)、反復演習によって解答時間の短縮を目指しましょう。解答時間の短縮によって、高得点への第一歩となるはずです。
次に無機化学分野は、知識の定着と反応式を書けるようにしましょう。解くための時間がそれほどかからない問題が多くあるため、得点源としましょう。
最後に、有機化学分野は現役受験生が後手に回りやすい天然・合成高分子化合物などが失点に繋がる可能性が大いにあります。そのため、広範囲に渡る万遍ない学習が吉とでるでしょう。
まず、第一歩として教科書内容を中心として、反応や性質、検出方法を覚えましょう。その後、解けないことは対策が不十分ということを念頭において、苦手意識をもたずに継続的な学習を行い続けましょう。
他理科目の入試対策はこちら
・北海道大学(北大)の「物理」入試対策
・北海道大学(北大)の「生物」入試対策
過去問の傾向を年度別に徹底解説
2017年度
大問1 | Ⅰ理論科学 | 電気陰性度と熱化学、電気双極性 | |
Ⅱ理論科学 | ハーバーボッシュ法の化学平衡 | ||
大問2 | Ⅰ理論・無機化学 | 鉄の製錬、濃度、電気めっき | |
Ⅱ理論・無機化学 | 電気透析法、水の状態変化 | ||
大問3 | Ⅰ有機化学 | 酸素を含む脂肪酸化合物の構造決定 | |
Ⅱ有機化学 | 合成高分子化合物、ゴム、アミノ酸 |
特筆するべき事項として、2017年度から試験時間が理科2科目で150分になりました。そのため、問題内容も難しくなりました。
大問1のⅠは、導入文が理解出来たかがポイントです。Ⅱは標準的な問題ですが、解答までに時間と手間がかかります。大問2のⅠは問6がやや受験生に混乱を与える問題で、その他は一般的な出題内容です。
Ⅱは標準より難しく、問1を理解することが短時間では難しく、問2のグラフ描写も難しいです。大問3のⅠは難問です。問2以降が条件をうまく理解することが難しいです。Ⅱは万遍ない学習が行えていた受験生が大きく得点できた問題です。
2016年度
大問1 | Ⅰ理論科学 | 反応速度、濃度、グラフ | |
Ⅱ理論科学 | 混合気体の性質、飽和蒸気圧、モル分率 | ||
大問2 | Ⅰ理論・無機化学 | アルミニウム、水酸化アルミニウム、電気分解等 | |
Ⅱ理論・無機化学 | 炭素、結晶構造、存在比、生成熱 | ||
大問3 | Ⅰ有機化学 | アルケン、構造異性体、構造決定 | |
Ⅱ有機化学 | タンパク質、アミノ酸、不斉炭素原子 |
大問1のⅠでは、自然対数などが用いられており難易度が高かったです。問3では思考問題が出題され解答までに時間がかかります。Ⅱでは、グラフ選択問題で各々の元素を別に考え、合成する必要があり難易度が高いです。
ⅠとⅡともに難易度が高く、手早く処理できたかが高得点のカギとなるでしょう。一方、大問2のⅠとⅡともに基本的な出題であるが故に絶対に落とすことのできない問題です。大問3のⅠは考えやすい問題で、Ⅱは一目難しく感じる問題ですが、明瞭になるため得点に繋がりやすい問題です。
2015年度
大問1 | Ⅰ理論科学 | イオン交換膜を用いた電気分解 | |
Ⅱ理論・無機化学 | 電気分解、気体 | ||
大問2 | Ⅰ理論・無機化学 | 金銀銅の性質と結晶 | |
Ⅱ理論化学 | コロイドの性質、浸透圧 | ||
大問3 | Ⅰ有機化学 | 炭化水素、異性体 | |
Ⅱ有機化学 | 油脂・界面活性剤、異性体、水素付加反応 |
2015年度は全体として難問があまりなく、得点しやすい年度でありました。特に大問1のⅠはかなり簡単で、素早く解答を行うことがカギです。
またⅡでは、計算を手早く行えるかの問題でした。大問2のⅡでは、コロイドについて幅広く問われました。大問3のⅠのリード文では意味が分かり辛いものがあり、注意が必要です。
北大化学対策のオススメ参考書
教科書の振り返り
北大入試の化学において、基礎基本の高度な徹底が必要です。語句の記入や正誤判断問題などでは、付け焼刃の知識では立ちうちできないからです。しかし、覚えなければならない語句や定義は基本的な問題集で総おさらいを行いましょう。おすすめは以下の参考書です。
岡野の化学基礎が初歩からしっかり身につくシリーズ
・岡野の化学基礎が初歩からしっかり身につく
・岡野の化学が初歩からしっかり身につく 「理論化学(1)」
・岡野の化学が初歩からしっかり身につく 「無機化学+有機化学(1)」
・岡野の化学が初歩からしっかり身につく 「理論化学(2)+有機化学(2)」
これらの参考書は、基礎基本事項の復習となります。ただし、これらの学習を終えただけでは北大入試化学には太刀打ちできないため、以下の参考書も併用しましょう。
大学受験Doシリーズ
・鎌田の理論化学の講義(大学受験Doシリーズ)
・福間の無機化学の講義 三訂版(大学受験Doシリーズ)
・鎌田の有機化学の講義 三訂版(大学受験Doシリーズ)
上記の参考書は2次試験までの必携参考書です。何度も繰り返し読み返しましょう。
標準問題集網羅編
北大入試の化学では、高校化学の広範囲に渡る問題を全て学習することが肝心です。網羅系の問題集として以下の問題集がお勧めです。
リードLightノートシリーズ
・リードLightノート化学基礎
・リードLightノート化学
新訂エクセル化学総合版―化学基礎+化学
上記問題集を使って基本事項の知識の定着と、実践問題レベルまで解ける実力を何度も繰り返し解くことをおすすめします。
標準問題集計算編
計算問題が苦手で重点的に演習を行いたい受験生におすすめの参考書です。
・化学計算の考え方解き方 (シグマベスト)
北海道大学は計算問題も多く、基本的な計算問題が如何に早く解けるかが焦点になる年も存在します。
計算が得意という受験生にも一度は解いておいてほしい参考書です。
化学重点選抜群受験生向け
化学重点選抜群の受験生は、理科150点満点中100点を化学が占めます。他の受験生との差を広げるためには難し問題にもアタックし完答を目指す姿勢が重要です。そんな受験生にお勧めするのはこの一冊です。
・化学[化学基礎・化学] 標準問題精講 五訂版
大学受験ではお馴染みの精講です。良問が収録されており、解答解説を隅々まで読み込むことによって、初見問題にも対応できる力を養いましょう。
・過去問学習
最後に取り組むべきは過去問学習です。何を使っても良いので、以下に重点を絞って行いましょう。
・制限時間内を意識して解く。
・化学重点選抜群生徒は完答を目指す
・難問を見抜く力を養う
以上3点に絞って学習を進め、見事北海道大学の合格を勝ち取って下さい。
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